福島県立医科大学 脳神経外科学講座

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教授挨拶

Professor greeting

(略歴)
1992年 名古屋大学医学部卒業
1995年 マサチューセッツ総合病院
(ハーバード大学)留学(~1997年)
2000年 名古屋大学医学部脳神経外科・助手
2003年 国家公務員共済組合連合会名城病院脳神経外科・医長
2005年 同・部長
2005年 名古屋大学大学院医学系研究科脳神経外科学・助手
2007年 同・助教
2015年 福島県立医科大学医学部脳神経外科学講座・准教授
2021年 同・主任教授

 2021年6月1日から脳神経外科学講座・主任教授を拝命いたしました。2015年に名古屋から福島の地に参りましてから、前任の齋藤清前教授の指導のもと准教授として6年間学ぶ機会を得ました。その間、齋藤清教授はじめ大学内外の先生方から温かいご指導をいただきました。さらに、医局の素晴らしい仲間・スタッフに囲まれ、一方、多くの患者さんやそのご家族との忘れ得ぬ出会いがありました。この場を借りて、厚く御礼を申し上げます。皆様にいただいた御恩に報いるべく、引き続き、精一杯頑張る所存です。私は、「本物」にこだわって、すなわち、「時代を超えて国や地域を超えて通用する普遍的価値」、「患者の幸せ・健康に本当につながる医療」にこだわって、次世代を創りたいと考えています。

 さて、自分には、医師としての信条が三つあります。第一の信条として、私は、「すべての医療者は、患者さんを癒すためにある」と考えています。「本物」の医療とは、患者を癒すことのできる温かい医療です。病気を治すことが、最大の癒しにつながることはもちろんですが、それだけではない。もし叶わない場合でも、患者さんを少しでも癒すよう尽くすこと。身体だけではない、それぞれの人の心にも配慮する意味をこめています。実は、いつも何気なく使っている「病院」「病棟」という言葉があまり好きではありません。なぜなら、病院は病(やまい)の院、病棟は病の棟ですから、「病気・病人のいる場所」という意味を持つ言葉にすぎず、そこに肌のぬくもりを感じることができません。むしろ、癒しの院、癒しの棟、「癒院」「癒棟」と呼べたらいいと感じています。その意味で英語の”hospital”は、これに近いニュアンスを持つかもしれません。

 もう一つの信条は、「脳神経外科医として一流のマスターであること、そして『最高』を超えること」。すぐれた診療の技量・技術で「本物」の医療を提供したいと考えております。脳神経外科の分野は、日進月歩で進んでいます。そこで、当院では、より有効で安全な最新の脳神経外科医療の実践に取り組んでいます。手術室の中に、超高磁場術中MRIや血管撮影装置を備えて、手術中にMRI画像、あるいは脳血管の精密な画像を確認しながら手術を行い、さらに、手術ナビゲーションや脳機能のモニタリングなど、正確で安全な手術支援を積極的に併用しています。また、言語機能など、さらに高次の脳機能を守るため、手術中に患者さんと話をしながら行う覚醒下手術も得意分野の一つです。従来の大きく頭蓋骨を取り外す開頭術だけでなく、内視鏡を使った低侵襲手術、カテーテルを使った血管内治療など、より患者さんに優しい手術法にも積極的に取り組んでいます。

 三つ目の信条は、「科学的探究心を常に持つこと」です。患者さんと一緒になって病気に向き合い、ともに手を取り合い治療する。日々患者さんと寄り添うなかで、科学的探究心を常に持つことで、病気の解明や治療につながる手がかりを掴む。患者の持つ情報こそ、実験系にない「本物」であり、そこには必ず真実があるはずです。そこから如何に本質を見抜き、洞察を得るかが、科学・医学の進歩の鍵です。こうした患者由来の情報をもとに科学を展開する手法は、Patient-oriented Research(POR)と呼ばれています。私は、PORで次世代の医療を開拓したい、すなわち、患者由来の情報をもとに、これまでに得た多くの臨床家・研究者のネットワークを生かしてシーズを育て、基礎研究から橋渡し研究まで一貫して行って、次世代の医療を開拓したいと考えています。

 今まで述べてきた三つの信条に基づく診療・研究・教育の活動を通じて、魅力的な講座を作り、若い脳神経外科医を育てるとともに、一人でも多くの仲間を増やしたいと考えています。優秀で情熱のある若い脳神経外科医を一人でも多く育てること、このことこそ、地域医療を支え、未来の脳神経外科を作るための自分の使命です。これまでいただいたご縁を大切にして、また、これから巡り会う様々な人々との出会いを楽しみにして歩んで参ります。お気軽にお声をかけていただければと存じます。今後とも、どうぞよろしくお願いたします。